時代は、対流から輻射に
取締役会長櫻庭 髙光TAKAMITSU SAKURABA
株式会社テスク北海道札幌市中央区北7条西20丁目2番1
TSCビル
日本の伝統的な住まいは、多湿の風土から生まれた開放?の住宅であり、壁などの熱容量(蓄熱)を小さくして外気温への追随を高めてきました。従って、わが国の冷暖房は風を吹き出すエアコンや温風暖房器などの対流式が中心で、輻射式の風土ではありませんでした。しかし、建物は高性能化し快適性や健康性、省エネ性など住宅に求められるニーズは多様化しており、これからの冷暖房の主流は対流から輻射に移行せざるを得ません。
熱の伝わり方には3つの種類があります。
1つには、金属などの物質の中を熱が伝わる「伝導」。湯たんぽやホットカーペットのように発熱体に直接触れて温かさを発します。熱は高い方から低い方に伝わる性質を利用する方法です。
2つには、気体や液体が温まると気に起こる「対流」。気体や液体が熱せられると比重が軽くなって上昇し、冷たくなると重たくなって下降する性質があり周囲に熱を伝えます。
3つには、「輻射(放射)」があります。冬は外気が寒いのに、日光が当たっているところだけ温かく感じる「日なたぼっこ」。これは太陽の遠赤外線効果による輻射です。また、真夏にトンネルの中に入ったときひんやりとした涼しさを感じます。これは身体の熱が温度の低い壁に吸収されるからで、同じく輻射です。熱を持っている物体からは、その温度に応じた熱線(遠赤外線)が出ています。
輻射冷暖房の特性は次の通りです。
A. 快適性
- 気流感がない
- 室内の温度むらが小さい
- 静か
- 湿度に影響を与えない
B. 健康性
- 発病リスクの低減
- ヒートショックの抑制
- 認知機能の向上
- 活動量の増加
C. 省エネ性
- 熱効率が高い(空気熱ヒートポンプ空調不可率)
- CO2削減
- 循環水温度(夏は高く冬は低く)
住宅内における輻射と断熱気密の組み合わせによって、健康寿命と平均寿命の差を小さくし医療や介護を中心とする社会保障の崩壊を抑制しなければなりません。輻射は冷暖房だけでなく、健康最寿命住宅の役割も担っています。
時代は、対流から輻射に替わろうとしています。